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よくある質問

Q1 どのような時にHITを疑いますか?

A1 通常は、ヘパリン使用514日後に、血小板数がヘパリン投与前の30-50%以上の減少が認められる、または血栓の増悪あるいは新たな発生が認められ、他に血小板を減少させる原因がない場合にHITを疑います。

Q2 血液透析(HD)患者で導入前に20万/μlあった血小板数が導入1週間後に12万/μlに減少しました。HITの可能性はいかがでしょうか?

A2 透析の場合は、ヘパリンを13日置きに使用するため、その間に血小板数が回復し、この基準まで低下しないこともあります。ヘパリン透析で十分量のヘパリンを使用しているにもかかわらず回路内凝血が見られる、あるいは透析後に血小板数の減少が認められる場合は、HITの可能性が高いです。

Q3 HITを疑った場合にはどのように対処すればよいでしょうか?

A3 直ちにヘパリン低分子ヘパリンも含むを中止するとともに、圧ライン確保等のための微量ヘパリン投与、ヘパリンロック、ヘパリンコーティングカテーテルなどすべてのヘパリンを中止します。抗凝固療法が必要な場合は代替の抗凝固薬を使用します。またHIT抗体測定のために採血をしておきます。

Q4 ヘパリン代替薬として低分子ヘパリンは使用できますか?

A4 低分子ヘパリンは交差反応を起こしてHIT症状を悪化させることがあるため使用できません。

Q5 HIT発症時のヘパリン代替薬として何がありますか?

A5 欧米では、アルガトロバン、レピルジン、ダナパロイドがあります。本邦ではアルガトロバンとダナパロイドが医薬品として承認されていますが、HIT治療薬として使用可能なのはアルガトロバンのみです。

Q6 血液透析時の代替抗凝固薬としてメシル酸ナファモスタットは使用できますか?

A6 HITの場合には、体内で過剰のトロンビンが産生されてきます。メシル酸ナファモスタットを使用した患者さんもいましたが、メシル酸ナファモスタットでは血栓症の合併を抑制できませんでした。メシル酸ナファモスタットは半減期が短く、生体内で抗トロンビン作用を示さないため、血栓リスクの高い患者さんにはアルガトロバンの方が有用です。

Q7 血液透析時の代替抗凝固薬:アルガトバンの使用法および用量について教えてください?

A7 HIT患者の血液透析時の凝固防止の場合は透析開始時に10 mgを回路内に投与し開始後は維持量として25 mg/h (7μg/kg/min)で開始し凝固時間の延長回路内凝血(残血)透析効率および透析終了時の止血状況などを指標に増減します(540 mg/h)。最近のHIT症例では、急性期経過後は開始時510 mg、開始後7.510 mg/hで問題なく透析が行われている場合も多いようです。

Q8 HIT患者で血小板数回復後も直接的抗トロンビン剤(アルガトバン)を使用したほうがよいのでしょうか?

A8 HIT抗体が陽性期間中は、原則的にヘパリンの投与は禁忌となります。血液透析の場合は、透析中の血液凝固防止が必要となりますので、血小板数が回復した後も、抗体が陰性になるまでは、代替の抗凝固薬を使用します。

Q9 透析日以外の日もアルガトロバンを使用したほうがよいのでしょうか?

A9 血栓性合併症がない場合は、透析時だけの使用でよいと思われます。ただし、HITは血栓発症リスクが高いので、透析日以外でも凝固亢進状態があればアルガトロバンを使用します。

Q10 HIT患者で長期間ヘパリンを中止した後、再度ヘパリンを投与することは可能ですか?

A10 HITを発症した患者では、原則的にヘパリンの再使用は禁忌となっていますが、最近ではHIT抗体が陰性化した後にヘパリンを再投与してもHITを再発しないという報告が増えています。しかしながら、ヘパリンの再投与によってHITを再発したという報告もあり、ヘパリンを再投与する場合には十分な患者説明と再投与後の血小板数のモニタリングやHIT抗体検査を行いながら経過を観察する必要があります。

Q11 HIT患者の場合、ヘパリンロックも禁忌とされていますが、それに替わる方法を教えてください

A11 ヘパリンを使わず、生食のみでロックを行います。アルガトロバン生食(1mg5mg/100ml生食)を用いることも可能です。

Q12 HIT抗体検査としてはどのような検査がありますか?

A12 HIT抗体検出法としては免疫学的測定法(ラテックス免疫比濁法、化学発光免疫法、ELISA、イムノクロマト法など)と機能的測定法14C-セロトニン放出試験、血小板凝集法、マイクロパーティクル法など)があります。

Q13 HIT抗体はどこで測定できるのでしょうか?

A13 免疫学的測定法であるラテックス免疫比濁法と化学発光免疫法を用いた3試薬(ヒーモスアイエルアHIT-Ab、ヒーモスアイエルアキュスターHIT-Ab、ヒーモスアイエルアキュスターHIT-IgG)2012年に保険適応となり、現在化学発光免疫法(ヒーモスアイエルアキュスターHIT-IgG)とラテックス免疫比濁法(ヒーモスアイエルアHIT-Ab)が検査センター(BML, SRLなど)で測定可能です。また、最近イムノクロマト法(イムファストチェック HIT-IgG)が2023年に保険適用となり、ベットサイドでの迅速な測定が可能となりました。機能的測定法としては本邦ではマイクロパーティクル法が北海道大学で測定されています。

Q14 ヘパリン1万単位/24hでは症状が認められないのに、ヘパリンロックのような少量のヘパリンでHIT症状が認められました。HIT症状はヘパリン暴露量と関係はありますか?

A14 HIT抗体出現には、ヘパリン投与期間と総投与量が関与すると言われていますが、留置カテーテルの抗凝固に用いる少量のヘパリンでもHITが発症することもあり、HIT発症とヘパリンの投与量の関係については必ずしも明確になっていません。

Q15 血液透析の導入期にHITを発症する場合が多いようですが、維持期(導入後複数年経過)に発症する可能性はありますか?

A15 透析患者においては、導入期に集中しますが、維持透析時での発症例もあり、導入期以外でのHIT発症も否定できません。

Q16 HIT Type T(非免疫機序)の発症機序を教えてください

A16 T型は、ヘパリンの物理生物的特性により、ヘパリン自体が血小板を直接刺激し、活性化することにより起る一過性の血小板低下です。ヘパリンに対する感受性のある血小板の保有者に起こり易いかどうか詳細は不明です。

Q17 HIT 患者に血小板輸注は必要でしょうか?

A17 本邦の血液製剤使用指針では、HITにおいて明らかな出血症状がない場合には予防的な血小板輸血は避けるとしています。米国の胸部専門医学会(ACCP)のガイドラインでは、重度な血小板減少を認めるHIT患者において、もし出血がある場合、もしくは出血の可能性が非常に高い処置を行う必要がある場合にのみ、血小板輸血を行うことを推奨しています。

Q18 ワーファリンはHIT患者の抗血栓薬として使用できますか?

A18 ワーファリンはHITの急性期にはプロテインC系の抑制のため皮膚壊疽などの合併症が報告されており、急性期での投与は禁忌です。血小板数が回復し、長期に抗凝固療法が必要な場合にはアルガトロバンからワーファリンに切り替えていくことができます。

Q19 HIT が疑われた場合、すでに投与されているヘパリンをプロタミンで中和する必要はありますか?

A19 プロタミンは抗凝固作用を中和しますが、ヘパリンの抗原性を中和する訳ではありませんので、HITの発症予防にはならないと思います。

Q20 HIT を発症した時の凝固マーカーの動きはどのようになりますか?

A20 HITはトロンビンの嵐と称されるように、トロンビン産生が亢進し、強い凝固亢進を示します。日常の凝固線溶マーカーの中では、凝固亢進状態の判定にD-ダイマーやFDPが用いられ、HITによる血栓の新生、増悪に伴ってD-ダイマー、FDPも上昇します。

Q21 DICとの鑑別方法はありますか?

A21 HITDICは血液凝固線溶検査において非常によく似た結果を示すことから、この結果だけでは鑑別することは困難です。従って、HIT抗体の測定は非常に重要であると考えられます。

Q22 NOAC(新規経口抗凝固薬)はHITの治療薬になりますか?

A22 現在、HIT患者に治療薬としてNOACを使用し有効であるとの見解は得られていません。今後、エビデンスの集積が必要であると考えます。


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血栓止血研究プロジェクト

E-mail.kekken@th-project.org